皆さんご存知のように 某国の春節(旧正月)は、爆竹で始まり爆竹で終わると言って良いほど旧正月の風物詩となっている。しかし 毎年限度なくやらせていたもので その後処理の大変なこと 花火ゴミだけで何千トンも出るのである・・・また空気汚染の大変ひどいことから 年を追うごとに政府が規制をかけ始めている。時に春節での空気汚染は、極めて深刻な状況になりここ最近のPM2.5騒ぎに輪をかけて批判も大きいために さらなる厳しい規制を検討する大都市が増えてきている。

20162月の春節ではついに上海市政府は、中心部での花火を一切禁止とするおふれを出した。某国首都でも3年前ぐらいから第5環状道路内側での所定の場所以外での爆竹・花火の禁止を再開したが あまり守られているともいえない。但し 不景気も相まって確実に花火の量は少なくなってきている。今回は、この花火の話である。

某国の爆竹と言えば 日本でも神戸や横浜の中華街でその季節になれば バンバンならすので知らない人は少ないであろう。昔は、普通の駄菓子屋に「2B弾」とか「爆竹」として普通に売られていたが 子供の怪我と小火の原因になることから次第に制約がかかって 街角からはすっかり姿を消した。私も子供の頃は、爆竹遊びが大好きで 箱で買ってきては1本ずつ解して 導火線に火をつけて投げる遊びを繰り返した。導火線に火を付けタイミングを見ながら弧を描くように水田に投げる、空中に浮いてる時間が長すぎれば空中爆発、早すぎれば導火線が水で濡れて不発で終わる。ポツっと水の中に落ちてから水中で破裂すれば 腕が良いと周りから認められた(笑)。

話がまた逸れてしまったが 某国における爆竹は、遊びでやっているように見えるが きちんとした意味がある。春節前の爆竹は、「大きな音で昨年の悪いことを忘れ去って 良い年を迎えよう」とか「大きな音を立てて 悪霊を追い払いましょう」とか言う意味でならされる。音は大きいほど好まれるので 花火売場では「これはいい音が出るよ!」「よく鳴るよ!」とか宣伝して売っている。町で一般的に売っている連結爆竹は、500連、1000連、2000連、3000連、5000連、10000連(円形に丸めてある)などがあるが 5年ほど前までは、普通の5倍ぐらい太いサイズの爆竹を平気で売っていた。こいつは、爆発力が強いぶん音も大きい。これをほぐして遊んでいる奴がいたが 導火線の火の回りがやたらと早く しかも指が吹き飛ぶぐらいの威力があったので 極めて危険であった。今は、政府が規制して販売中止になっているが 破裂音が大きいので人気があり まだ闇ではあるようだ。

旧正月を控えて 街角やお店の入り口には、爆竹を模した大きな赤い筒を沢山ぶら下げたものが「春節の飾りつけ」として沢山ぶら下げられる。その筒のサイズがあまりにも大きいので 某国友人に 「これが本物の爆竹だったら まさにダイナマイト級の威力だね、」と言ったところ 「昔 地方の農家では、これと同じサイズの大きな爆竹があって 肝試しで 鳴らしていたのです。」と返ってきた。それこそ一歩間違えれば即死サイズである。

春節の花火は、爆竹が主かと言えば実はそうではない・・・打ち上げ花火こそ主役なのである。これがすごい! 日本では、打ち上げ花火は、サイズもデカイし関連資格が無いと扱えない。でも・・某国では、自由に購入できるのだ。多くは、大きな筒型か みかん箱のような段ボール箱型で 蓋をあけて導火線に着火すれば 50100連発とかで各種花火が連続して飛び出てくる。2030メートルぐらいの高さで花が咲くように破裂するが 実に見事である。金持ちは、春節に面子をかけてこれらを“爆買い“し 自分の住むマンションの敷地で バンバンと打ち上げる。日本だったらすぐに110番通報されるだろうが 春節の風物詩としてこの時期だけは誰も文句は言わず喜んで見学する。

ちょっと昔には、段ボール製の筒を使って 1発ずつ打ち上げる「麗花弾」と言う危ない種類も売っていて 好き物は、好んでこれを買っていた。こいつの扱いを間違えた場合の死亡率は高く某国首都でも春節の期間に30人ぐらいが死んでいたらしい。大きいものは、ボーリングの玉ぐらい、小さいものでも野球の硬球ぐらいはある。導火線の付いたこの玉を筒に入れて着火させると 5080mぐらいまで上昇して大輪の花が咲く ここまで行くと日本のプロが打ち上げる小型の玉と変わらない。きちんと90度で真上にあげれば問題ないが 斜めに打ち上げたり 道路に転がして破裂させる輩が多く 販売禁止となって久しい。

今住んでいるこの街の公安のお偉いさんが 酔っぱらって玉の上下を取り違え 着火と同時に昇天した事故もあったが、あちこちで火事は起きるわ けが人は出るわで花火にまつわる事故は絶えなかった。私も目前で人が亡くなった事故に遭遇したが ちょっとその話をしよう・・・

2004年の春節の時だったと記憶しているが、その当時首都の中心部は、花火の規制が有ったので 運転手君に頼んで皆が盛大に花火を打ち上げる場所に連れて行ってもらった。部下の夫妻も某国最初の春節体験と言う事であったので一緒に連れて出掛けた。首都郊外のある住宅街だったが 暗い道を走っていると前方の道路中央に誰かが 点火した花火を転がしたのが見えた・・途端 大炸裂! 道路上に大きな半球の花火が咲いた。「もう少し車に近かったら 車がふっ飛んでいたぞ」・・ぐらいの爆発力である。まったく 手榴弾じゃないんだから・・・冗談もいい加減にしてほしい

目的地に着き、我々は車を止めて道路上で打ち上げられる様々な打上げ花火を楽しんでいた。しばらくしてである・・道路対面の守衛所が突然ドカ〜ンと爆発しガラスや扉が吹き飛んだ、その直後の二度目の爆発で窓からメラメラと高く炎を上げて燃え出した。「伏せろ!」夫妻に指示した後 運転手と現場確認しようと道路を渡りかけたら またドカ〜ンと三次爆発 あわてて退避である。落ち着いた頃合いで現場を見に行ったら 3人ほど黒焦げになっているのを目撃、既に誰かが声をかけていたが 焼け爛れて耳も鼻も無くなっている・・あれでは助からない。

原因は、守衛が部屋に積み上げていた花火に 打ち上げ花火の流れ弾が飛び込み引火したものらしい。(守衛は、副業として花火を付近の住民に売っていたのだ。もちろん違法) 

守衛室には、暖房用のプロパンの大きなボンベが有り 花火の破裂でガスボンベにも引火爆発したので惨事となった。この時期 某国各地で同じような事故が繰り返されていたのである。翌年には、私の目の前で公園が大火事になったしまったし 有名な事件では完成間近の中央テレビの付属ビルが丸焼けになったのも このビルで打ち上げ花火をしたのが原因であった。但し 一般大衆、政府の豪華な建物が燃える時は、大喜びで見学である・・・

春節に期間 一般的に日本人は帰国してしまうので いつも留守番兼ねて私は、某国で旧正月を迎えていた、それ故 楽しみの一つが花火である、お金持ちの打ち上げ花火を見るだけでなく 自分も大量の花火を買い込む。政府認可を取っている市内正規店で買うとバカ高いので 運転手と共に隣の省まで買い出しに行くが ここでもリスクが生じる。この季節、市外で安く買って市内で売りさばく輩が増えるので 高速道に臨時の検問が設けられ軽トラやバンは、検査を受ける。見つかったら全没収と罰金である。しかし 一般の乗用車はそれほど積めないし 個人の買い出しが目的なので検査を省く場合が多く 一度も没収になったことはなかった。縁起を担ぐ私は、毎年爆竹や各種打ち上げ花火をみかん箱2箱ぐらい買い込んで こちらの習慣に合わせ春節の初日と15日目の元宵節に盛大に鳴らすのであった。

2011年の春節初日(某国では「初一」と言う)には、私の住んでいたマンションの出口で当該マンションの住人達が集まり 打ち上げ花火や爆竹を鳴らしていた。市内どの場所でもお祭りのピークは、新年(旧暦の新年)の午前零時であり 某国首都は、湾岸戦争勃発時のバクダットのような様相となる。町中が花火の大爆発音と爆竹の機関銃連射音の嵐と化す。私も零時に近づいたので 箱に入れた爆竹等を持って皆が鳴らしている場所に集合である。零時の時刻と共に 花火は佳境に入り零時半頃に少し落ち着きを見せ始める。

町中が爆撃を受けたようになる。
 あちこちで打ち上げられる花火

私も手持ちを消化して 皆さんの打ち上げ花火を見ていたが 周辺の様子が少しおかしい・・・56人の住人が暗い道路を覗き込んで 頻りに何かを探している。よく見ると 地面に沢山の血痕がぽたぽたと付いているのであった。「どうしたの?」と聞くと 「あの人の指探しているのよ」 どうも 花火の点火時に指を吹き飛ばしてしまったようである。親指は、根元から無くなっており もう一方の手で押え止血していたが 誰からか「アホなやつだね」と言われ 指を抑えたままその人と蹴り合いの喧嘩までしている。バカバカしくなり 探すのをやめてマンションに戻って上から見ていると その内救急車が来て治療に行ったようだった。花火に関しては、こんな事が日上茶飯事起きているのだった。

PM2.5の問題化で市民意識も少しであるが変わり始めた。2014年・・2015年と年を追うごとに 春節の花火の音が少なくなってきている。私自身も僅かしか買わなくなり 形だけ悪魔祓いして終わらせるようになった。今住んでいる市は、以前は、街のあちこちに花火屋が出ていたが 2016年は、すっかり姿を消して正規販売店すらあまり見かけない。公害問題に加え 値段も高くなりすぎて買い手も減ってきているのである。正規店の親父に「なんでこんなに高くなったのよ?」と聞くと「認可制度のせいで 役人に多額のお金を払うから その分乗っけないと儲けが出ない」そうである。この季節の花火販売は、販売認可制度で役人にとっても美味しい思いのできる季節であっただろうが 別の役人が出す規制のせいで 花火業界自体が廃れてくれば腐敗役人の収入も減る、ザマ〜見ろと言う感じである。

                                      (2016220日 記)

ボクの某国論
其の十六 怖〜ぃ・・・花火のお話 
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